【Quip vol.26 2001.9.30発売】
「自分の曲で自分の感情も揺さぶってみたい。」
『バラードコレクション』でポップシーンに踊り出た「初恋の嵐」
メンバーチェンジを経て2作目の作品『Untitled』をリリース!
"この時代のポップになりたい"という彼等2/3人にインタビュー。
●初登場なので自己紹介をお願いします。
西山(以下 西)ボーカルとギターの西山です。
隅倉(以下 隅)ベースの隅倉です。
(ドラムの鈴木君は欠席)
●バンドの結成の事から伺いたいのですが。
西:元々は、僕神戸出身なんですけど、埼玉のとある大学でドラムの鈴木と知合って、音楽サークルもないような環境だったので、音楽好きな人とはすぐに知り
あえちゃうような状況で。割と自然に。最初は僕と鈴木君とで色んなベーシストを物色しながら。それが第1期初恋の嵐ですね。そして彼(隅倉)が別のバンド
をやっていて、都内でライブをしだした頃に知合って。対バンとかしたりして。当時の彼のバンドの企画にもよく出してもらったりして。付き合い自体はもう古
くて5年くらい立つんですけど。加入したのは去年の12月くらいなんですけど、付き合い自体は長くて。今回オリジナルベーシストの子が留学を機に辞め
ちゃったんで、それで何の迷いも無く彼に声をかけて、彼も何の迷いも無く加入して今に至ると言った感じです。後は僕がコモンビルというバンドを平行して
やってたり。
●コモンビルと初恋の嵐はどちらが先だったのですか?
西:元々は初恋が先で、平行して1年くらいやってたけども、コモンビルに専念したくなって、また初恋やりたくなって、結局コモンビルからは抜けたんですけ
ど。もう今は初恋の嵐に専念している状況。
隅:もう今は誰も掛け持ちはしてないですね。 ●作詞作曲などは初恋からですか?
西:いや、それは高校の時から。ぶっちゃけた話、思春期は尾崎豊とか浜田省吾とかでしたね。一匹狼的な、青春みたいなね。
●年齢的には・・・だいぶ違いますよね(笑)。
西:好きだったんですよ。最近になって余裕で言えるようになりましたね(笑)。ある時はもうひた隠しに。
皆:うははははは(笑)。
●隅倉さんのバンド歴はどうですか?
隅:前のバンドは3年くらいですね。その前にミクスチャーのバンドがあり、あと掛け持ちで色んなバンドをやってたり。サポートだったり。
西:いわゆるバンドマン。
隅:前のバンドを3年間やってて考えてた時に平行して3ヶ月間くらい初恋をやってて。ダブってる1ヶ月でもう辞めることは決めてて、残り2ヶ月で説得して
辞めました。説得というか一方的に辞めるって言ってて、反対されたけど。
西:結構しんどそうだったよね。流石に。
●元々長い付き合いではあったけれども、3年間やっていたバンドを辞めて加入するほどの魅力が会った訳ですよね?
隅:まあ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
西:無いのかい!
皆:わははははっ(笑)。
●いいツッコミが(笑)。
隅:いやなんつったら良いのかなって。ま、トリオの楽しさもあったし、俺が入ったらもっと良くなるだろうなって。
西:うははっ(笑)。
隅:ウソウソ(笑)。元々彼がコモンビルの頃から何か一緒にやろうか?って言ってて、練習スタジオ入ったりしてたんですよ。魅力ももちろん感じてはいたけ
れどももっと漠然としてて、自然の流れみたいな。
●あとは人間としての相性みたいな物も?
隅:それは有りますね。
西:一番、だから・・・遊んでましたね。
隅:普通に時間作ってレコード屋遊びに行ったりしてたもんね。
●日本語で歌ってるのは何か
西:ごく自然に始めっから。うん。それに関しては考えた事は無いですね。日本語のが楽だし英語は書けないし(笑)。
隅:書けないよね。ほんとにおかしいよね。日本語のバンド少なかったけど俺からしてみれば英語の方か変だよ。だってどう考えたって平素は日本語の曲、バリ
バリに聴いてる訳じゃないですか。そっちの方が馴染んでるくせにさ、無理矢理英語とか。
西:うん。僕は逆に洋楽しか聴かないんですけど、URCとかフォーク、はっぴいえんどにズブズブって行った時もあるし・・・だから日本語って事でもなく、
始めっから日本語ですね。
隅:日本語とか英語とかこだわりは無くて自然に。
西:あっ思い出した!高校生のときに留学したいと思ったんだ。オアシスとかキャストとかホワイトアウトとか色々出てきたじゃないですか?そしたら
GREAT3とか出てきて「あっ日本語でも大丈夫だ!」って思ったんだ。ぶっちゃけトークだけど。そのころ「英語でやる=留学するしかない」って思ってた
んだ(笑)。そうしないと英語で歌えるミュージシャンにはなれない!って。変に留学出来てたら大変な事になってた(笑)。
隅:向うではこんな事やって無いかもしれない(笑)。
●曲の出来方はどんな感じですか?
西:完全に曲が先ですね。メロディが浮んで鳴らして適当にラララで当てずっぽうで歌ってみて、何となく無意識に歌ってみた物を後々聴いてみるとそのメロ
ディにその言葉しか考えられなくなっちゃって。それに捕らわれて他の詞をでっち上げたり(笑)。
●作る時には「作る気」になってるのですか?それとも遊んでる内に?
西:基本的には、常に作ろうとしていると言うか・・・毎日狙っているっていう。
皆:(笑)。
西:毎日待ってる感じはあるんですけど。
隅:家で何かが降りてくるのを待ってるんだ(笑)。
西:そうだね。基本的に家でギター触ってる限りは曲を作ろうと思って触ってる。練習し様とかじゃなくて。
●こんな歌詞にしたいと言う方向性は無いのですか?
西:そこまで深く考えて無いから解らないけど、最近得に思うのは、まずメロディがあって。洋楽で何歌ってんのか解らなくても気持ち良いじゃないですか?
じゃあ言葉って何なんだろうと考えた時に、僕なりに幻滅させないダサイ言い回しとか響きじゃなければ良いんじゃないかなって。アバウトなんですけど、言葉
はそれぐらいで良くて、極力メロディを邪魔しないような響きであったり。もとの鼻歌の感じを壊さない中で、つじつまが合っていたり自分の気分とちゃんとリ
ンクしていたら。一番良いですよね。語感とかは凄い気にする、むしろ内容よりも。
●コモンビルでも曲を作っていましたが初恋の嵐との何か違いはありますか?
西:コモンビルというバンド自体の体質が・・・・・・僕を除いた3人が10コ上ぐらいだったんで、かなり離れてて皆大人な感じで。1/4、1/4ずつで皆
がバンドを客観的に見れて、混ざり合うとかでもない感じ。各々が各々の事やって組み合わせられる感じ。そういうちょっと大人な感じだったんですね。初恋の
嵐は、結構混ざると言うか、気持ち的にも演奏的にもかなり突っ込んでいけると言う。
●コミュニケーションが深い感じ?ですか?
西:そうですね。コモンビルは大人だし、照れるっていうのかな。本気でジャムセッションしようぜっていう空気には絶対ならない。自分等を騙せない、ロック
幻想に酔えない感じ。初恋の嵐は・・・『バラードコレクション』は今考えたらロック幻想に溺れてみましたって感じはあるんですけど、『untitled』
はロック幻想とポップスの狭間で多少客観視もある感じで。今はそのバランスが結構いいかなって変に冷めてもないしやろうと思えば熱くもなれるかなって。
隅:自由な感じ。
●はい。曲が形になるのはどんな風に?
西:以外とイメージから外れる事は無いかな。だから任せる感じ。サウンドを編集するっていうのはむしろこっち(隅倉)で僕はあくまでも素材を持って来て。
でも隅君が入る迄は、説明する言葉の力もなかったから。ポップスとして凝縮出来るようになって来てる感じがあって。結構楽しいかなって。
『untitled』は基本的に自分達で録ったんですよ。隅君のエンジニアリングで全部。そういう人なんです。半分偽ミュージシャン(笑)。
隅:うん。そうそう。
西:偽ベーシスト(笑)。Sound&Recording Magazineばっかり読んでる。
隅:普通の音楽誌見ないですね。
●『バラードコレクション』は1発録りだったとか?
西:厳密に言うと2曲目だけオーバーダブちょっとしてる、でも1発取りで。1曲だけギターを重ねただけなんで基本的には歌も1発で。ただのスタジオライ
ブ。
●それでは今回の『untitled』はどんなコンセプトで?
西:ちょっとは作り込んだ事しようかなって。普通にリズム録って、ギター、歌、普通の事を。あとは人に借りたりして機材があったから自分達で出来るなっ
て。3人で何か1つの事やれば結束も出来るかなって思って。凄い青いコト言ってますけど(笑)。
●CDのタイトルに『untitled』を据えるというのはこの曲に思い入れがあったからですか?
西:うん。これを作った時に何となく自分が理想としている曲・・・得にスタジオで持って行って、バンドで音出した時に「あ!」っていう達成感があった。
で、色んな意味合い、受け取り方が出来るなって思ったんですけど。やっちゃった事によるちょっとした空しさみたいな。「次どうしようかな?これで満足し
ちゃったよ」とか、後内容も絶望的なのでそれで『絶望の歌』ってゴリ押しする必要も無いから。ちょっと今回はタイトルは無しで。後付けもちょっと有りつ
つ。曲名で"untitled"っていうのがポイントかな?って思っただけで。「何だろう?」って思わせる感じ。そういう匿名性と言うか。持たせたかっ
た。タイトルによってイメージを喚起させたく無かった。
●はい。1曲ずつコメントをお願いします。"untitled"は他にありますか?
西:内容についてはとりあえずろくでもない歌。悲惨ですよね。決意っぽいかんじもあったんでこれでタイトル"決意"とかにしたら一瞬で俺等ダサくなるから
(笑)。
隅:ヤバいね。
●はい、"フライング"を。
西:これは"untitled"ともリンクするんだけども、"untitled"は非常に感情を込めつつも無題じゃないですか?でも"フライング"に関し
ては本当に何も無い感じでっていうか。真空状態な感じ、僕のイメージの中ではね。で、タイトルも飛んでるんだかフライングしちゃったのか、一応この中では
フライングしちゃったって事になってるんですけど。これは色々と言葉遊びがあって。ちょっとエッチな歌でもあったり。
●はい。ラストの"さえない男達"を。
西:これは若気の至り感がありつつ、歌詞とかも恥ずかしいから全部書き直そうと思ったんだけど結局嘘くさくなっちゃって。結局3,4年前のままにしようと
思って。ちょっとアレンジも変えて元々自由度の高い曲だったんで。ちょっとバラードコレクション引きずってる感じ。
隅:そうだね。
●歌詞とか今の3人が揃ったという事を言ってるのかと思ったんですが、
西:いや、ところがね、前の3人の話なんですよ。この人(隅倉)入ってないんで。
隅:俺入ってない。
西:よく考えたらひどいよね(笑)。
隅:酷い!
皆:わはははは(笑)。
●印象なんですけど全てにおいて限定させたくないという意識があるのですか?
西:うん。ありますね。何か別に・・・何か感じてもらえれば良いんですよね。何か。学生運動当時の若者でもないので直接的なメッセージは無いワケであっ
て。核になる感じを分かってもらえればいいかなって。
●直接的にどうこうじゃ無くて、聴いて各々が何か自由に感じて欲しいという?
西:それは凄く有りますね。僕自身も自分の曲に対してそういうところがちょっとあって。自分も何か・・・自分の感情も揺さぶってみたいというか。やってる
以上は。そうやってまた次の事が生まれるだろうし。今はまだ得に聴き手に対してどうっていう余裕が無い、ですね。先々どうなるか解んないですけども。う
ん。願わくば、酷い事言ってんだけど、メロディの力だけで中和したいみたいな。ま、ポップソングでは有りたい。
●ジャケットのアイデアはどこから?
西:何となく漠然とイメージはあったんですけど。最初に提案したのはプラカード持ってるヤツで何枚も撮ったんですけど、僕凄く嫌で。ダメ出ししまくって
(笑)。
隅:レコーディングの時に色々置いて撮って、そん中の1枚。色味とかも凄くよくて。
●歌の温度感とジャケの色味があっていて。
西:うん。僕もこのジャケは大好き。裏ジャケはダメだけど。
皆:裏ジャケ・・・・・・・・・・・(笑)。
隅:キツいね。
西:ま、完璧に何もかもやっちゃうとそこで満足しちゃうからね。プラス思考というよりトホホ感(笑)。
隅:やっちゃったなって(笑)。出来あがってから気付いた。
●でも『バラードコレクション』とかも・・・
西:あれは良いんですよー。あそこ迄スカシ感が行ってれば。普通にブサイクですからね。むちゃくちゃショックで。
隅:おばちゃんみてぇな顔してる。
皆:わはははははははは(笑)。
隅:近所のおばちゃんがダベッてる(笑)。
●はい、今後の展開等教えてください。
西:最近はライブに興味を持っていて。一時期ライブが凄い嫌で。最近は歌をちゃんと伝えなきゃ話になんないバンドなんだなと。歌をちゃんと響かせなきゃと
立ち返った上で面白くなって来た。今迄は無闇にボリューム上げて、正にロック幻想の中にいた訳ですが。だから『バラードコレクション』から
『untitled』への流れがライブの中にもあるっていう。得に明確なビジョンもないけど不安感もまったく無い感じ。
●いい感じで。
西:はい。今は良い曲書きたい病ですね。あと、どんどんタガが外れてきちゃって最近。尾崎を認める自分とか素直に聴けばoasisってこんなに良かったっ
け?とか。なんか凄く楽しい。"untitled"で素になった恐怖感もあったんですけど、素になった分敏感になっちゃって(笑)。
●じゃあ凄くいい状態ですね。今後の野望があれば教えて下さい。
西:今は特に、ポップスモードと言うか。ポップスですね。ただのポップスを突き詰めたい感じはある。その時代その時代で変わると思うんですよ。
隅:売れたい。分かってもらいたい。
西:このスタンスでタモリまで行きたい。それがめちゃめちゃ幸せなんじゃないかと。僕らいつも言ってるんだけどそこ迄行かないと後は全部一緒みたいな気が
する。優勝以外は全部一緒なんだみたいなね。めちゃめちゃ大衆的になりたい。
●最後に読者にメッセージを。
西:色んな遍歴をもってやって来た若者達がめちゃめちゃ素になってやってみた感じっていうのを聴いてみて欲しい。本当に青年の主張的な感じですけど、そう
いう得に『untitled』に関しては何の策略も計算もないから。どう思うんだろう?って。今世の中が混沌としてるじゃないですか?何が売れてもおかし
く無いし。その中でめちゃめちゃ素になった。それをちょっと感じてみて欲しい。
●どうもありがとうございました。
(文:朝倉文江)
*原文ママ掲載
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